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地上の好きな天使 第一章第3話-2
第一章

第3話-2 子ねこのカノンとフーガ、天使のつり糸と翼の秘密を知る 後編


その後、数日して…。子ねこたちが出窓から外をのぞいていますと、ツゥーーー、かぼそい糸にぶらさがるようにして、クモの坊やがつたい降りてきました。
「クモさん!」フーガがさけびました。おや、みると、その足さきにはまた、ガガイモの葉がくっついています。が、きょうはツバメじゃなく、クモが自分じしんで持ってきたのですけれど。
「どれどれ、取ってあげる」
カノンは言いながら、窓のすきまに頭を入れると、いそいで開けました。そして、クモ糸がにくきゅうにからまないよう気をつけながら、ツメでそぉっとガガイモの葉先をつかみかけました。そして、きれいに編んだクモの巣がこわれないよう気をつけながら引っ張って、ようやく葉っぱをお口にくわえました。
「取れた!」フーガが言いながら、カノンが床にそっと落とした葉っぱをつかまえました。
クモは、かるく会釈をしました。そしてもうこれで今日の用事はすんだというように、そそくさと身をひるがえすと、さっきの糸をたたみ込みながら、またツゥーーと空へ昇っていきました。
「クモさん行っちゃった。いそいでるみたいだったね。ねぇ、その葉っぱみせて」フーガがさっそくカノンをせかしました。
「なんだか伝言板みたいだったわね。」カノンが笑いました。けれどもそれは、じっさい伝言でありました。カノンは読みあげました。
「えぇと、こうよ。……ボクタチ、テンシニ コンドハチャントシタオクリモノ スルコトニナッタ。アタラシイ、テンシノツバサ。デハマタ」
「おくりものだって!」フーガが叫びました。「天使におくりもの。」
「今度はちゃんとした、ですって」カノンも首をかしげて言いました。「この間、あたらしい糸玉をおくったばかりなのに…」
「あたち、ちゃんときいてくる!」フーガはいうなり、開いた窓のすきまから、いちもくさんに庭へ飛び出しました。
「待って、あたしも行く」カノンも庭へ降りていきました。

  ***

クモの坊やはどこへ行ったのでしょう?このまえ出会ったバラのアーチのそばで、ふたりの子ねこはしばらくたたずんでいました。
しばらくすると、ゆさゆさするコブシの木陰から、お空の色やすみれ色に光る一本のかぼそい糸が、かすかに風にたわみながら、ゆっくりと降りてきました。
「やぁきみたち!もうここへ来ていたのかい」クモの坊やがあいさつしました。
「だってすぐにかえっちゃうんだもん」フーガが口をとがらかせました。
「仕方がないよ。ぼくはいま、さっそくシュギョウチュウだもの。いろいろ忙しいんだ。」クモの坊やがしかつめらしい顔でいいました。
「何のシュギョウ?」カノンがたずねます。
「さっき葉っぱの伝言したとおりさ。ぼくらこの辺りの地上のなかまは、結局あのあと、お空の天使のために翼を織ってあげようってことになったんだ! それは、植物や鳥たちや、白いけものたちの羽根や羽毛でつくりあげるんだけれど、その下地(したじ)にぼくらクモの作った、ちょっと手の込んだ巣網を使うんだぜ。」
「すごい!」フーガが拍手しました。
「ほんとに手作りの、プレゼントなのね」カノンがうっとりとした口調でいいました。
「そうだね。ほんとうにこのあたりの生きものたちは、みんな、お空の天使にいつか姿をあらわしてもらおうとおもっていて、それじゃ手づくりの翼でも贈ってみよう、ってことになったってわけなのさ。」
「だけど、このまえ手作りの糸玉をプレゼントしたばかりなのに」カノンがちょっと不思議そうに言いました。
「天使はあれ、受けとってくれたんでしょ?」とフーガ。
「まぁね…たぶん。でもそれはじつをいうと、よくわからないんだ…」クモの坊やはちょっとうつむいて言いました。「あの日空高くのぼっていってくれた鳥たちや羽根を持つ仲間たちに聞いても、とどいたような気もするけど、よくわからないって言ってる。」
「まぁ」カノンがそっと相づちを打ちました。「そういえば、たんぽぽの精さんも、そんな風だったわ。しっかり見とどけたものはいない、って。」
「そうなんだ…だからこそ、こんどはちゃんと、たしかにとどくように、ってみんな思ってる…ってこともあるのさ。ただ、こうは言っていたよ。先頭を行くヒガラのむれが、もうこれ以上高くは行けないよ、くるしいよ、ってさえずりだした。とそのとき一陣の風が吹いて、そのひょうしに糸玉がみるみるほぐれはじめたんだって。そいつはうっすらとたなびいて、か細い線を何本もひきながら、空中を泳いでいくと、やがて長いながいすじ雲に、変わっていったんだって。空飛ぶ五線譜のようなやつに。」
「そう!」とカノンは言って、もしカブリオルがこの話を聞いていたら、それはきっと自分が作った音楽をのせた五線譜にちがいないわ、っていばるだろうな、と思いました。
「じゃそれが、天使の受けとりの合図なの?」フーガがしつもんしました。
「と、思ってるってことさ…。じっさいそうなのかは、わからないけれど。なにしろ天使の姿を、だれも見てはいないんだからね。」

  ***

「ところで、こんどの翼のプレゼントでは、もうさいしょから、ぼくたちクモのちからだけではむりで、みんなのたすけをかりなけりゃならないんだ。翼の網のなかに、いろんな羽毛だの羽骨だの、わた毛をいれるからね。でもみんなとっても協力的で、自分の羽根も織り込んでくれって、言ってきてくれる。それくらい、みんなひとめ天使の降りてくるのをみたいんだ。ほんとの姿をあらわしてほしいって、おもっているんだよ。」
「あたしたちの毛も、つかっていいよ!」
フーガがうつくしい白い胸の毛に手をあてて、元気よく言いました。クモの子はわらいました。
「だけど…ぼくは、ほんというと翼のプレゼントには、正直いって、あんまり気がすすまないんだ。」
「どうして?」
「うん‥。そぅ、うまく言えないけど、なんだか…。ときどきぼく、思うのさ。天使は、ほんとに翼なんかもらって、よろこぶのかなって。翼なんかつけて、ほんとに降りてきてくれるかなぁって。」
カノンとフーガは、目を見合わせました。
「天使ってほんとに、翼をつけて降りてくるものかなぁ?…。」
クモさんたら、カデシさんとおんなじこと言ってる、とフーガはちょっと思いました。
「ねえきみたち。どう思う? 天使って、地上に降りるとき、そんなりっぱな、目立つかっこうで、じっさいやってくるものかな。」
カノンはだまって、そういって首をかしげているクモの子をみつめていました。フーガは、ふうん、ふうん、と首をかしげながら、こう言いました。
「あのね、ええとね。うちのショサイってとこに、そんなのがあるよ。壁にかかってるの。天使っていう子が、空中に浮かんでて、頭のうえにわっかをつけて、背中から白いツバサがでているの。ふるいふるい絵なんだって、カブリオルがいってたよ。」
「そう。昔から、天使には白い翼が背中についているって、人間たちはみんな物語のなかで言ってきたし、絵にもそう描いてきたんだ。」
クモの子はしかつめらしい顔をしてこたえました。
「だけどさ。あれは、人間たちが想像した、天使の姿なんだぜ。ぼくらはそんなふうに人間たちが、あんまり長いあいだいっしょけんめいに言うもんだから、すっかりそういうものだと思わされてきちまったけれど。だけどじつはほんものの天使が、ほんとにあのままの姿をしているかどうか、きっとまだだれもショウメイできてないにちがいないんだ。ね!きみたちはさ、ほんとうにあんなしっかりときまった、目にみえる姿で、天使があらわれると、思うかい?」
カノンもフーガも、だまってじっとクモの子をみつめるだけでした。が、しばらくしてカノンが、ふと、もの思うような口調でつぶやきました。
「たしかに、もっとこっそりと、静かに降りてくるものかもわからないわね。もし天使がほんとに、地上に降りてくるんだとしたら、それはきっとだれにもわからないように、こっそりと。」
「そうなのさ。ぼくもそう思うよ。ほとんど気のせいみたいに思えるくらい、ひそっと、やってくるにちがいないって。まあ、それでもぼくは、みんなといっしょに、天使のために翼を編もうって案には、やっぱり参加しようと思うし、どうせ編むならすてきなのを編んで、お空にとどけたいって思っているけれどね。たしかに、天使が人間たちのいうとおり、あんな白いすてきな翼をつけていたら、それはたしかにうつくしいにはちがいないものね……。だからぼく、けしてがっかりしないよう、心の準備はしておくけれど、そのうえで、やっぱりできるかぎりのことはするつもりさ。せっかくのみんなの夢だもの。」
「そう…。やっぱり、そんなにしてまで、みんな天使の姿が見てみたいのね。わたし、みんなが天使に翼をつけた姿で出てきてほしいって思う気持、なんだかわかるわ。」 カノンがしみじみ、そう言いました。

  ***

夜になると、カノンとフーガはカデシさんに、昼間クモの坊やと話した天使への翼のプレゼントのことを、そっと打ちあけました。

「ええまぁそうなの。…それでみんなは、もうじき天使に、あるプレゼントをして、それを身につけて地上にすがたをあらわしてもらおうとしてるわ? そのプレゼントにはね、クモはもちろんだけど、小鳥たちや、たんぽぽやとんぼたちもみんなキョウリョクするのよ。みんなでキョウリョクして、つくりあげるの! あっ、そうそう。それにカデシさん、キョウリョクするのは、あたしたちも、なのよ!」

「ほう! カノンとフーガもかい。プレゼントのための、協力ねぇ。いったいどんな協力だい?」
「それはもちろん、天使にあげるプレゼントの、なかみのための、キョウリョクだよ! あたしたち、もうクモにお毛毛をあずけてきたもの。」
フーガはカデシさんにだっこされながら、そう、じまんげに言いました。

「へえ!でいったい、なかみというのは何だい?つまりなにを天使に、プレゼントするんだね?」

「翼だよ! 天使の翼。」フーガは元気にさけぶなり、カデシさんの肩から飛びおりて、身ぶり手ぶりでわめきたてました。

「お星さまのデデブの、ハクトージャみたいな、こぉんなの。」フーガは、おもいきり両手をひろげてカデシさんにしめしました。
「ほほう! デネブ。白鳥座。」カデシさんはちょっとおかしそうにお口をゆがませました。
「そ! きょうからもう、つくりはじめるんだって。クモさんって、とっても編みもの、じょうずなんだから。」フーガはこうふんでいっぱいになりました。
カノンもつづけます。
「それで、その翼を編むのは、もちろんクモたちなんだけど、クモの糸だけでは、つくれないの。そこにいろんな小鳥たちの羽毛や、羽根の骨や、トンボなんかの羽根もいれるわ。たんぽぽのわた毛だってよ。透きとおってるか、白いふわふわした毛なら、だれのでもつめて、編み込むのですって。そのなかに、あたしたちの、このへんのやわらかいところの毛もいれるのよ。それであたしたちもう、昼間にクモさんに自分たちのこの胸の毛を、すこしだけ、あずけてきたの。きっともう、ほかにも、この辺りのなかまの白い毛や羽根が、うちのえんのしたにいろいろあつまってきてるにちがいないわ。」

カノンがそう言って、胸のたいそうやわらかい毛を、すこしだけあぐあぐ、かじってみせました。ナデシコ色のリボンのすずも、ちりちり鳴りました。カデシさんは目をほそめました。
「それはすばらしいねえ。だがいったい、なんでまた翼なんかあげるんだい? 天使の坊やが、おくれよって、言ったのかい?」

「ちがうわ。だって、だぁれもまだ、天使とお話なんかしたことないんですもの。見たことさえ、ないんだわ。ただ地上のみんなが、かってにそれをあげてみたらどうかって、おもってるだけだわ?」
カノンがすこし、口ごもりました。
「そう、だれも、じかに天使とお話したこともなければ、そのすがたも、じかにみたことはないのよ。だからこそ、みんなはあんな、翼のおくりものなんかを、思いついたんだと思うわ。翼のおくりものをすれば、……」
「おくりものをすれば?」
「もしかしたら、天使がそれをつけて、降りてきてくれる。きっと雲のうえではそうしているはずの、ほんとのすがたのまま、地上にあらわれてくれるかもしれないって、そう思ったんだわ。」
カノンはそう言いおわると、カデシさんのお顔をちらりとのぞきました。
「なるほどねえ。……雲のうえの、ほんとうのすがた、か。」
カデシさんは、考えぶかげにあごひげをこすりながら、静かに言葉をつづけました。
「そうすれば、光の網や丘の帯や、つり糸のことも天使からじかに聞きだせるし、地上のものたちにはたいていみえない、天使の、翼をつけた姿を、はっきりと見られるかしれないと、そう思って、そのプレゼントをあげることにした、っていうわけかな?」

「たぶん、そうだと思うわ…。」
「そうか……。ともかくみんな、それほどにまで、天使と出会ってみたいということなんだね?」
カデシさんは、おちついた声でひとつひとつほりおこすように、ききました。カノンもフーガも、こっくりうなずきました。

「それはすてきなことだね。すこしでもじかに、地上のものたちが、お空のむこうのものと、むすびつきたいと思うのはね。すてきなことだし、もっともなことだ。それにまた、ふだん見えにくい相手を、できるだけはっきりした〈かたち〉で、みてみたいと思うのもね。ごく自然な気持だとおもうよ…。(わたしだって、教えてくれる、あの光じしんのほんとうの〈色〉を見つけようとしたのだったからね…。)
だがさて、みんなが出会おうとしてる、天使のほんとのすがたっていうのは、どうなんだろうね?……それが本当に、天使のほんとの姿なんだろうかね……?」

カデシさんはまたすこし、考えぶかげに、半分ひとりごとのような口調になって言いました。
「みんなが降りてきてほしいとおもっている、この目ではっきり見たいと思っている、天使のすがたっていうのは、やっぱりその、“翼をつけた天使の”、姿なのかい。」
「そりゃあそうだよ!」
フーガがすかさず、ひと声さけびました。

「そうかい……。それはやっぱり、たとえばむかしからよく絵にかかれてきたような、頭には光の輪っかに、白い翼、というふうな、あれかい?」

カデシさんは、もういちど念をおすように、お部屋の壁にかかっている、セピア色の古い絵を指さしながら、たずねました。

「うんうん。そう思ってるとおもうわ。」カノンがうなずきました。
「思ってる、思ってる。」フーガもはしゃいで言いました。「だから、翼をあげたんだよ。」

「ふむ。そうだとしたら、天使の坊やはもう、地上に降りるのが、なかなかむづかしくなってしまうかもしれないなあ……。」
カノンは、おどろいた顔でカデシさんを見あげました。
「どういうこと?」
カデシさんは、パイプをくゆらしはじめました。なにかぼんやり考えごとをするときの、いつものくせで。

「きっといまごろ、こまったなあって、雲のうえで、頭をぼりぼりかいているかもしれないよ。ふふふ。」
カデシさんはそう言うと、天井にむかってけむりをぷっぷかぷっぷかふきました。
それから、ふとカノンとフーガのほうに向きなおると、じっくりふたりをみつめながら、なにかいままで秘密にしていたお話をはじめて聞かせるみたいなしんみりした口調で、こう語りはじめました。

「ねえ、カノンとフーガや。このえかきのカデシさんも、ほんとはときどき想うんだ。さっきもちょっと言ったように、目に見えない天使のことを……。とくに雲のうえの世界にいる、天使。つまり天のくにの天使のことなら、その「すがた」を自由に想像したってかまわないだろう? だってそれはもともと、人間がかってに想像する世界だからさ。たぶんあの虹色によく光る雲にでものって、頭に輪っかをいただいて、白い翼をつけたかっこうで、ゆうゆうと地上をみおろしてるんだろうな、とか、丘のうえの教会の塔のてっぺんでも光ると、ああいま、いたずらしたそうな目でわらっているのかな。なんていうふうにね。
でもそんな姿をした天使は、つまりわたし、えかきのカデシさんが思う天使だ。好きな姿かたちをあたえたり、名前をつけるのも勝手なんだ。だけれど、ときどきこうも思うんだよ。かってに空想できる天使は、やっぱりお空のうえの天使。まだ天のくににいるままの天使だ。そいつは、なるほど天使らしい天使だ。けれど、じつはほんとの天使じゃないって…。ほんとの天使っていうのは、じつのところ、〈地上に降りてきてはたらく天使〉だってね。つまり、地上のだれかに舞い降りて、そのだれかの形をとる天使、あるいはそのはんたいに、そのだれかの目のうらで、まわりの風景や、とりまく世界を見つめている、天使のほうなんだ、って。まあそのふたつは、同じひとつのことなのだけどもね。
ようするに、こういうことさ……。天使はなにものかの形をとったとき、そのつど、ほんとの姿になるんだ。それまでの天使は、だれかが想像しないかぎり、ただの透きとおった、宙ぶらりんの、名なしのごんべえなんだ。へたをすると、お空の、遠いかなたへ追いやられちまうのが、おちなんだ。……
ねえ、こうは考えられないかい? 透きとおった、目にみえない天使は、むしろ透きとおって、これといった姿かたちがないからこそ、自由に地上のいろんなものになれるんだ。いろんなひとや土地のもとに、舞い降りられるんだって。それに天使じしん、もともと透きとおってきまった形がないからこそ、いろんなものに生まれ変わりたくってたまらないんだ。って……。それが、天使のほんとのすがただって、そう考えるわけには、いかないものかね?
お空のうえのことは、もちろん、わたしにもわからないが、――ひょっとすれば、お空にいるってことさえ、ほんとうかどうかわからないんだからね。わたしたちがそう、想像してるだけで……。――だから、そっちの世界のほうはともかく、すくなくとも地上にいるときには、これといった姿かたちのないまま、いろんな姿かたちをとる、ってのが、天使の、ごくそのままのすごしかただとは、いえないものかね?」

カデシさんは、もういちど、天井にむかってけむりをぷっぷかふきました。けむりは輪っかを描きながらのぼっていくと、ランプのしたでもくもくあつまって、ふんわりしたちいさな雲をつくりました。


カノンは目をまるくしたまま、何もこたえませんでした。ただぼんやりと、昼間クモの坊やがふと浮かべた、気のりしない顔を、まぶたのうらに想いうかべていました。そういえば、カデシさんとよく似たことをぼやいていたな、そしてたんぽぽの精も‥‥。

「天使には、自分のすがたかたちがないからこそ、自由に、いろんなもののなかに入りこめるし、いろんな形やけしきをかりてあらわれることができるのじゃないかな。だとしたら、みんな、天使が目のまえに姿をあらわしてほしいと、思うものたちは、むしろ天使がいつ、どんなすがたで、どこにあらわれてもいいように、どうぞ地上にいらっしゃい、って思っているほうが、いいんじゃないかな?……もしも天使ができるだけいろんなものに、いろんな場所に生まれかわってきたい、と思っているとすれば、……いやそれどころか、いろんなところに、同時に降りることだってじっさいできるかもしれないんだとすれば、なおさらだ。わたしたちは、いつどこで、どんなものの姿かたちを通して、天使に出会っているか知れやしない! だとしたら、なんてすばらしいことだろう。」

カノンは、それを聞くと、カデシさんのほっぺたに、ゴロゴロのどを押しつけて甘えました。カデシさんは、カノンを抱きあげました。

「そう。たとえばもし、ああ、ここに天使が降りてきた、ここで呼んでる、あそこで踊っておしゃべりしてるって、そう思った子がいるとしたら、天使はそのとき、その子が見たり聞いたりしてるもののなかばかりでなく、その子じしんのなかにも、もうちゃんと入りこんでいる、っていうふうに…。そんなふうに天使は、地上のみんなのなかに、いろいろ生まれかわることができるもの、なのかもしれないんだよ。だったらば、わたしたちはいつもたのしみに天使の降りてくるのを待って、いつ、だれの姿をかりてきてもかまわない、いつでも天使とお話できる、こころの用意をしてあげていさえすれば、もう天使はよろこんでくれるにちがいないのじゃないかな? ね、そうはおもわないかい?」


フーガはカデシさんのひざの上で、クウクウいねむりをしていました。

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